Infinito Nirone 7

白羽の矢を刺すスタイル

沼の三種盛り合わせレシピ - 自転車、カメラ、キャンプ

この記事は沼 Advent Calendar の 15日目の記事です。

アドベントカレンダーの説明にあるとおり、沼とは

"あるジャンルが好きになり過ぎてハマってしまい抜け出せなくなること。沼落ち。"

のことを指します。ざっくり言うと、趣味にハマりすぎて抜け出せなくなることを指して沼と言っているのでしょう。つまり、人の趣味の数だけ沼があることになります。 私はこの内「自転車」「カメラ」「キャンプ」の三種類の沼に同時につかっています。

はじめての沼「カメラ」

いわゆる一眼レフカメラというものに初めて触れたのは大学3年次のときです。カリキュラムにある授業のなかで、芸術系に属しグラフィックデザインの基礎素養を学ぶことができる授業を取っていたところ、先生が全員に初級者向けの一眼レフカメラを配布し、「なんでも好きなものを撮影してくること」という課題を与えられました。構図の作り方の基礎知識やカメラの扱い方のレクチャーを受け、いざ実際に外に出て写真を撮ってみると、これがめちゃくちゃ楽しいわけです。それまでもコンデジで写真をとるということはしていましたが、美しい写真を撮るということについて初めて実践できたのはまさにこのタイミングで、それまでとは全然違う写真が撮れること(機材としても、知識・技術としても)に楽しさを見出したのでした。

その授業がおわるやいなや、授業でつかった機種と同じメーカーの初級者向けカメラを購入(Canon EOS Kiss X3)し、あちこち撮影にでかけたのをよく覚えています。

こういう初級者向けカメラは、多くの場合キットレンズと一緒に売られていて、広角から望遠まで一通り体験できるような組み合わせになっています。かつ広角側と望遠側では別のレンズが用意されていて、用途に合わせて付け替えられるよう別のレンズになっている、いわゆる「ダブルズームレンズキット」というものを買いました。最初は特に気にもしないのですが、使い慣れてくると気になるのが「レンズ交換の手間」と「マクロ欲しい」の2点。大学を卒業してから、レンズ交換の手間を省くため便利ズームと呼ばれる広角から望遠まで幅広く一本でカバーできるレンズと、マクロ用にパンケーキレンズを買いました。

便利ズームは本当に名前の通り便利で、たいていのシチュエーションでレンズ交換無しでスッと写真が撮影できるのがよいです。ただし欠点もあり、どうしても構造上「暗く」なるため、シャッタースピードを遅くしたり、ISO感度を無理に上げたりしないと、光量が少ない場面では十分に明るく撮影できません。室内で望遠をきかせた撮影では特に暗くなりがちで、シャッタースピードを遅くすればブレるし、ISO感度を上げたら写真にザラザラとノイズがのってしまうしで、そういった状況では「明るいレンズ」が欲しくなります。が、そういう明るいレンズはとても高価。数十万円〜数百万円と、軽く桁がかわってきます。

そう、カメラ沼の最たる沼要素はまずレンズにあります。望遠も広角もこなしたいとなると、一本で済ませられる便利ズームは便利ではあるものの、どうしても写真の美しさにデメリットがある。そして便利ズームではこなせない望遠レベルも存在し、逆に便利ズームではこなせない広角レベルも存在する。さらにそれぞれに、レンズの持つ明るさも異なる。そしてもしカメラ本体を複数もったとき、レンズを接続する「マウント」にも種類があるため、マウントごとにも対応するレンズが必要になる。これがレンズ沼です。

一方で、最近はミラーレス一眼カメラも人気ですね。特にSony製のαシリーズの評判がとてもよく、追随する他社も次々に新製品を出しています。また自分が最初に購入した初級者向け一眼レフカメラAPS-C と呼ばれる規格のもので、カメラのセンサーが小さいために本体・レンズともに小型化が容易です。これ以外に、カメラのセンサーが APS-C よりも大きいフルサイズカメラがあり、ハイアマチュアからプロ向けまで幅広くラインナップがあります。どれもそれぞれに長所・短所があり、カメラ沼のもうひとつの沼です。

自分の場合、最初に買ったEOS Kiss X3はしこたま使い込んで天寿を全うしたため、現在はEOS 6D MarkIIというフルサイズ一眼レフカメラをつかっています。便利ズームは APS-C タイプのみ対応のため、同等のレンズをEOS 6D MarkII用に探しています。しかしやはり便利ズームは暗いんだよな……

手段が目的化した沼「自転車」

4年ほど前、自分の体重増と運動不足が気になってなにか気軽に運動できるものをと思って始めた趣味に自転車があります。最初は通勤を自転車ですることで運動時間が確保できていいな程度に思っていたものが、気がついたらかなりのお金をつぎ込んでいた沼になります。

自転車沼に入るきっかけは、休日も自転車で出かけられる点にあったなとおもいます。最初は奥多摩、次に秩父…などなど、自転車で行ってみると、きれいな景色を見たり、おいしいランチを食べたりと、自転車に乗る以外にも楽しいことが見つけられます。最初はストイックに運動して体力つけて痩せるぞ!と思っていたはずなのに、気がつけば「あそこのランチが美味しいらしい」とか「あそこに行くときれいな景色が見られるらしい」といった具合に考えがシフトしていきました。自転車で運動したからカロリーをとっても大丈夫という免罪符まで使い始めたころで、ああ沼にハマったなと自覚しました。

自転車であちこち旅行気分を味わえる楽しみを覚えるとはつまり、旅先である程度お金を使うということです。そして自転車は定期的なメンテナンスが必要な乗り物。例えばタイヤやブレーキ、変速パーツは使うほどに消耗していくものですし、車体もあちこち出かければその分だけ汚れます。これらの消耗品は早ければ数ヶ月、長くても1年に1回は交換することになります。どういうものを使うかにもよりますが、タイヤにしてもブレーキにしても、2〜3千円に収まるものもあれば、1万円ちかくまでするものまであります。多くの場合消耗品の価格はおおよそ1万円以内に収まるはずですが、交換頻度が高くなるとその分だけお金がかかってきます。

さて、しばらく自転車を楽しんでいると、消耗品以外にも変えたい部品というものが出てきます。最もわかりやすい部品としては車輪があり、車輪の素材(アルミあるいはカーボン)や太さ、スポークのつくり、フリーハブ(車輪の中心にある部品)のつくりなどいくつかの選択肢があります。おおよそ軽くてよく回転する車輪は高くなりますが、人によって好みがいろいろあり、軽いだけが正義ではないこともあるので、用途に合わせて買い集めていたらすごい額のお金を費やしていた…というホイール沼がそこにあります。

また車体に関しても、アルミ・チタン・スカンジウム・カーボン・クロモリなど様々な素材をつかって各社が製造しています。概ねアルミとクロモリが最も安価で、チタン・スカンジウムなどの希少な金属をつかった車体やカーボンの車体は非常に高価になりがちです。素材以外にも、どういう用途に向けて作られたのか(とにかく軽くして山を登るのに有利にしたもの、空力性能を最大限引き出せる作りにして平地を速く駆け抜けるために作られたもの、体にかかる負担を軽減して長距離を楽に走れるように作られたもの)によっても価格帯がそれぞれにあります。好みをかけ合わせると、一概にカーボンの軽い車体がよいとは限らず、アルミの硬さが好きな人もいるので、まさに車体沼ですね。

自分はこの沼にはハマったことはないのですが、人によってズブズブと泥沼化しやすい沼のひとつに「サドル沼」があります。自転車に乗るなかでもかなりの長い時間腰を落ち着けることになるサドルには、車体や車輪以上に体との相性があります。相性が悪いと、股関節に痛みを感じやすく、自転車に乗るのが苦痛になります。そのため、自分の体に合うサドルを探す旅に出たまま帰ってこない人もいるくらいには深い沼です。

この他、より遠くへ自転車で出かけるために「輪行」をすれば交通費や宿泊費がかかり、レースやイベントに参加すればエントリー費もかかり、細々したパーツをあれこれ変えたらその分だけお金がかかるのが自転車沼です。

とにかく楽しい沼「キャンプ」

もともとアウトドアの経験はあったものの、自分でテントを設営して寝袋にくるまって寝るということをし始めたのは今年に入ってからです。「ゆるキャン△」がテレビ放映され、知人と気軽にやってみるかという感じで始まったのがキャンプ沼です。

実を言うと自分はまだそこまで沼の住人ではありません(と言い張っている体にしている可能性はありますが)。キャンプ道具の大半はレンタルでまかなえてしまうため、たまにキャンプをしにいく程度であれば、テントや寝袋を買う必要はありません。ただし、レンタルをする場合お店がどれだけの道具を取り揃えているか、またどれだけのキャパシティがあるかによって借りられる道具も変わってくるので、買って持っておきたい気持ちもわかります。

キャンプ道具にも種類があり、概ね自転車と同じく軽くて性能がよいほど価格帯が上がります。例えば寝袋でいうと、軽さ以外に対応している気温の範囲があり、低い気温(一桁あるいは氷点下)に対応していくほど高価になります。

キャンプの楽しみ方は様々で、河原キャンプであれば川遊びができますし、臨海キャンプであれば海遊びができます。また、登山×キャンプという組み合わせもあります。

最近はオートキャンプ場(車で乗り入れることができるキャンプ場)もたくさんあるので、必ずしも高い買い物をする必要もないのですが、ある程度自分で持っておくと便利なものもいくつかあります。例えば、コッヘル(キャンプ用の鍋みたいなもの)とレギュレーター(携帯できるガスコンロみたいなもの)があればお湯が沸かせるのでいろいろな料理が作れ、寝袋があればどこでも寝られるので、震災などがあったときに生き延びるすべを得られるという点でキャンプ用品を持っていると実用的で便利です。

キャンプ用品も様々あり、スキレットなど料理の道具を極める沼もあれば、テントの居住性を高めるために道具を揃える沼、寝袋の快適性を高める沼など様々な道具の沼があります。

ちなみに今年は3回キャンプへ行きました。この他、コテージ泊のグランピングも1回やっています。アウトドアは本当に様々な楽しみがあり、バーベキューをしたり、星空や日の出を拝んだり、平原でバドミントンをしたりと、多種多様な楽しみ方を組み合わせることができます。

AND沼

実を言うと、これまで取り上げた3種類の沼はANDをとって組み合わせることが可能です。つまり、自転車で旅をし、訪れた場所で写真をとりつつ、宿泊はテントで、ということができてしまいます。なんならキャンプ場の夜で星空を撮るとか、キャンプ場での楽しいことも写真に収められちゃいます。

最近はキャンプ用品をレンタルできるキャンプ場もあるため、キャンプをするのに必要最低限の荷物とカメラを担いで自転車に乗れば、キャンプ用品を運ぶことはないという楽しみ方もあります。

もしキャンプ用品も自転車で運ぶ場合、カーボンの車体は不向きですが、アルミやクロモリなどの金属製であれば、荷物を運ぶためにつくられた車体もあります。そして実際、この3つの組み合わせを実践している人もいます。こんなに簡単に組み合わせを作れる趣味(もとい沼)というのもなかなか無さそうです。いつか自分もこの AND 沼に……浸かってみたいものです。